看護・介護職のためのメンタルヘルス対策

看護・介護職は、人の命と暮らしを支える尊い仕事です。「ありがとう」「あなたがいてくれて助かる」――そんな言葉に励まされ、やりがいを感じる方も多いでしょう。しかしその一方で、心の負担を抱えながら働く人も少なくありません。夜勤やシフト制勤務、利用者やご家族との関係、業務の多忙さ、チーム内の人間関係。日々のストレスが積み重なり、「もう少し頑張れば」と自分を追い込み、気づけば限界に近づいてしまうこともあります。
厚生労働省の調査では、看護・介護職の主なストレス要因として「職場の人間関係」「夜勤の負担」「時間外労働の多さ」が挙げられています。
また、約4割の職員が「強い不安や悩みを感じている」と回答しており、心の健康が揺らぎやすい環境にあることが分かります。「利用者のために」と一生懸命に働くあなた自身の笑顔こそが、実は最も大切な“支え”です。今こそ、「ケアする人のケア」について、一緒に考えてみましょう。

参照:厚生労働省「メンタルヘルス対策のポイント」(閲覧日:2025年10月22日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000615723.pdf

看護・介護現場に多いストレスの特徴

看護・介護現場に多いストレスの特徴

人との関係で生じるストレス

看護・介護職は、さまざまな人と関わる仕事です。
患者さん・利用者さんだけでなく、そのご家族、医師、リハビリ職員、上司や同僚など、多くの人と関係を築く必要があります。その分、感情のすれ違いや誤解が生じやすいのも現実です。

「利用者の家族から厳しい言葉を受けた」
「チームで協力したいのに、うまく伝わらない」
「上司に相談したくても、忙しそうで話しかけづらい」

こうした積み重ねが、“人間関係の疲れ”を生み、心の負担につながっていきます。

身体的な疲労と睡眠不足

介助や移乗などの身体的な負担に加え、夜勤や早番・遅番といった不規則な勤務も大きなストレス要因になります。「睡眠が浅い」「休日もぐっすり眠れない」という声は多く聞かれます。体が十分に休まらないと、集中力や判断力が低下し、感情のコントロールも難しくなります。つまり、身体の疲れは心の不調を引き起こすきっかけにもなるのです。

感情労働の重圧

看護・介護職には、「いつも優しく、穏やかであること」が求められます。相手の苦しみや悲しみを受け止めながら、自分の感情を抑えて対応する――。そんな日々が続くと、「もう笑えない」「何も感じたくない」と心が少しずつ麻痺してしまうこともあります。
これは、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の典型的なサインのひとつです。心が疲れ切る前に、まずは「自分の感情にも気づくこと」が大切です。

放置するとどうなる?

放置するとどうなる?

メンタルの不調は、最初はごく小さな違和感から始まります。

  • 眠れない、または寝ても疲れが取れない
  • 仕事に集中できない
  • 食欲が落ちた、または食べすぎてしまう
  • イライラしやすくなった
  • 「自分はダメだ」と感じることが増えた

こうしたサインを見逃してしまうと、うつ病や適応障害などに発展する可能性があります。
厚生労働省の「介護施設等の職員のためのサポートガイド」でも、「不調を早く見つけ、早く対応すること」が最も効果的と明示されています。
特に、真面目で責任感の強い人ほど「自分が我慢すればいい」と抱え込みがちです。しかし、我慢の積み重ねは決して美徳ではありません。

“気づいた時点で相談する”ことこそが、プロとしての第一歩です。

参照:厚生労働省「介護施設等の職員のためのサポートガイド」(閲覧日:2025年10月22日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000757739.pdf

メンタルヘルスを守る3つの柱

メンタルヘルスを守る3つの柱

【個人】自分を守るセルフケア

  • 小さな変化を放置しない
     「最近、笑う回数が減った」「休日も疲れが取れない」など、日常の違和感に早めに気づきましょう。
  • 休息を“予定に入れる”
     夜勤明けや休日は予定を詰め込みすぎず、体を休める日をスケジュールに組み込みます。
  • 心のリセット時間を持つ
     軽い運動・深呼吸・音楽・お風呂など、リラックスできる時間を毎日10分でも確保しましょう。
  • 感情をためこまない
     「つらかった」「悲しかった」と言葉にするだけでも、気持ちが整理されます。

最近では、「マインドフルネス(今この瞬間に意識を向ける方法)」も注目されています。ほんの数分、呼吸に集中するだけでも、心の緊張をやわらげる効果があります。

【職場】チームで支え合う文化

  • 声をかけ合う習慣を
     「大丈夫?」「助かったよ」などの一言が、心の距離をぐっと近づけます。
  • ストレスチェック制度の活用
     職場全体のメンタル傾向を「見える化」し、改善のきっかけにしましょう。
  • シフトや業務の見直し
     負担が特定の人に偏らないよう、チーム全体で業務を分担します。

職場全体で「お互いさま」「無理しすぎない」を合言葉にできると、長く続けられるケアの職場文化が育ちます。

【組織】仕組みで支える体制づくり

  • 相談窓口の整備
     社内カウンセラーや外部機関、匿名相談など、気軽に相談できる窓口を複数設けましょう。
  • 復職支援・段階的勤務
     心の不調から回復する際に、段階的に仕事を再開できる制度を整えることが重要です。
  • 継続的な見直し
     メンタルヘルス対策は「一度きり」ではなく「続けること」が大切です。定期的な振り返りが、安心して働ける職場づくりにつながります。

参照:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」(閲覧日:2025年10月22日)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html

看護・介護職ならではの工夫

看護・介護職ならではの工夫

夜勤後のリカバリー

夜勤や交替制勤務の後は、まず「休む勇気」を持ちましょう。眠れないときも、スマホを見ずに静かな環境で横になるだけで、体と脳の回復につながります。休日は太陽の光を浴び、体内時計をリセットして生活リズムを整えることが大切です。

感情を整理する習慣

仕事で感じたつらさや悲しみを抱え込まないようにしましょう。「感情日記」を書いたり、同僚と話したりと、気持ちを外に出す方法を持つことが大切です。自分の感情に気づき、言葉にして整理することは、セルフケアの第一歩になります。

“支える人”同士のケア

リーダーや先輩が率先して「相談しても大丈夫」と言葉にすることで、職場に安心感が生まれます。「助けて」と言える雰囲気があれば、誰もが無理をせずに支え合える環境になります。こうした文化は、離職防止や職場満足度の向上にもつながる大切な基盤です。

チェックリスト:あなたの心の信号を見逃さないように

チェックリスト:あなたの心の信号を見逃さないように
  • 最近、笑顔が減った
  • 夜眠れない、または寝すぎてしまう
  • 仕事中に集中できない
  • 食欲や体重が変化した
  • 出勤前に憂うつになる
  • 同僚や家族との会話を避けてしまう
  • 「もう無理」と感じる瞬間がある

これらのうち3つ以上当てはまるときは、少し立ち止まるサインです。上司や同僚、または外部の専門窓口(例:「こころの耳」など)へ早めに相談しましょう。
相談することは、弱さではなく、「自分を守る力」です。あなたの笑顔を守るための一歩を、どうか恐れずに踏み出してください。

まとめ:自分を大切にできる人が、最良のケアを届けられる

まとめ:自分を大切にできる人が、最良のケアを届けられる

看護・介護職は、人の「生きる力」を支える尊い仕事です。けれども、あなた自身の心と体が健康でなければ、良いケアは続けられません。

メンタルヘルス対策は、特別なことではありません。

  • 無理をしすぎない
  • 感情を抱え込まない
  • 支え合う職場をつくる

この3つを意識するだけで、心は少しずつ軽くなります。

「誰かのために頑張るあなた」が、「自分のためにも優しくなれる」。
それが、これからの看護・介護を支える新しいスタンダードです。 疲れたときは、ほんの少し立ち止まって深呼吸をしてみましょう。その一呼吸が、あなた自身の「回復のはじまり」です。

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