新人介護職の指導で意識したい「伝え方」と「受け止め方」

介護現場においては、新人職員の育成が施設運営の安定性やサービス品質の向上に直結します。特に入職直後の新人は、環境に慣れない不安や緊張、覚える業務の多さから戸惑うことが多く、「できているのか」「迷惑をかけていないか」と自信を持てない期間が続きます。
そのため、指導者は“教える内容”だけでなく、“伝え方”や“新人の受け止め方”まで気を配ることが大切です。伝え方が良ければ新人は安心して学べますが、伝え方が悪いと緊張や萎縮を招き、力を出しにくくなってしまいます。
本稿では、新人介護職の指導における「伝え方」と「受け止め方」のポイントについて、実践に使える具体例を交えながら丁寧に解説していきます。

なぜ「伝え方」と「受け止め方」が重要なのか

なぜ「伝え方」と「受け止め方」が重要なのか

新人職員は、経験のある職員にとって“当たり前”のことでも、背景や意図がわからない状態で業務を進めています。そのため、伝え方がわかりにくかったり、感情的になってしまうと、誤った理解のまま覚えてしまうことがあります。
また、新人自身の受け止め方によっても成長速度は大きく変わります。注意を“否定”と捉えれば萎縮してしまいますが、“改善の材料”と捉えられれば前向きに行動できます。

この点について、厚生労働省の「介護人材確保に向けた取組」では、“新人が安心して働ける環境には、丁寧なコミュニケーションが不可欠である” とされています。
伝え方と受け止め方は双方が作りあうものであり、良いコミュニケーションは新人の定着・成長、そして利用者の安全につながるのです。

参照:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」(閲覧日:2025年11月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02977.html

指導者が意識したい「伝え方」のポイント

指導者が意識したい「伝え方」のポイント

育成計画を提示し、目標を共有する

新人の不安の多くは「自分が今どの段階にいるかわからない」「この先何を求められているのかが不明」という点にあります。
そのため、入職初期に育成計画や段階的な目標を提示し、道筋を示すことで新人の心理的負担は大きく軽減されます。

具体例:

  • 1ヶ月目:食事介助・移乗など基本介助の補助
  • 3ヶ月目:排泄介助・入浴介助の一部を独力で対応
  • 6ヶ月目:利用者の状態に合わせたケアの選択ができる

こうした目標を共有しておくことで、新人は「今はこの段階を練習しているのだ」と安心できます。

「見せる→やってみる→振り返る」で理解を深める

介護現場では実際の動きが非常に重要なため、

  1. 見せる(指導者の手本を見る)
  2. やってみる(新人が実践する)
  3. 振り返る(ポイントを整理する)

という順序が効果的です。

「見せる」段階では、手順だけでなく、「なぜその動きをするのか」という背景まで伝えるのがポイントです。
「やってみる」段階では失敗を恐れず挑戦できる環境が大切です。
そして「振り返る」では、良い点を必ず先に伝えることで、新人のモチベーションが保たれます。

非言語コミュニケーションを意識する

伝え方は言葉だけではありません。
表情・声のトーン・間(ま)・姿勢・体の向きなど、新人に与える印象は非言語情報によって大きく左右されます。

例:

  • 落ち着いた声でゆっくり話す
  • 相手の目線に合わせる
  • 否定ではなく「改善提案」として伝える
  • 忙しくても一度立ち止まり、丁寧に聞く

これだけで新人の安心感は大幅に変わります。

指導内容を統一し、現場全体で共有する

複数の先輩から違う指導を受けると、新人は「誰の言うことが正しいのか」と混乱します。そのため、指導内容の統一が不可欠です。

  • 手順書の用意
  • 指導担当者の明確化
  • チームでの情報共有
  • チェックリストの活用

こうした仕組みを整えることで、新人の迷いや戸惑いを大きく減らすことができます。
この点について、厚生労働省の「介介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」では、“業務手順の標準化は教育効率を上げるための基本である” とされています。
標準化は、新人育成を支える基盤となります。

参照:厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版」(閲覧日:2025年11月13日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf

新人が意識したい「受け止め方」のポイント

新人が意識したい「受け止め方」のポイント

指導の「意図」を理解する姿勢を持つ

新人のうちは、業務に追われて指示の意味を考える余裕がないことが多いですが、“なぜその手順なのか”を理解しようとする姿勢はとても大切です。意図がわかれば、単なる作業ではなく、意味のある学びへと変わります。

不安や疑問はため込まず質問する

質問を遠慮してしまう新人は多いですが、質問しないことの方がリスクです。
質問のコツは、

  • 「今の説明のこの部分が理解しきれていなくて…」と具体的に聞く
  • メモにまとめてから質問する
  • 「後で時間ありますか?」と遠慮しすぎない

など、聞き方に工夫をするとスムーズです。

注意を“否定”ではなく“改善のヒント”と捉える

注意を受けると落ち込んでしまうのは自然なことですが、受け止め方を変えるだけで行動は大きく変わります。

  • 「こうするともっと良くなる」
  • 「次に活かせるポイントを教えてもらった」

と考えることで、成長スピードが上がります。

自分の価値観や思いを伝える

新人であっても、「自分が大切にしたいケア」を伝えることは重要です。

  • 利用者様の話を丁寧に聞きたい
  • 安全を大切にしたい
  • 笑顔で関わりたい

といった価値観を共有することで、指導者は新人の思いを汲み取ったサポートができます。
このような“自分の考えを伝える姿勢”について、厚生労働省は、“職員の価値観を尊重することは働きやすさにつながる” と示しています。

参照:厚生労働省「地域における介護人材確保促進のための自治体向け手引き」(閲覧日:2025年11月13日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001512649.pdf

両者の理解を深めるための実践ポイント

両者の理解を深めるための実践ポイント

定期的な振り返りの場を設ける

新人と指導者が定期的に対話の時間を持つことで、コミュニケーションのズレを解消しやすくなります。
1ヶ月、3ヶ月、半年などの節目で行うと効果的です。

指導者自身も学び続ける姿勢を持つ

「仕事ができる」ことと「教えられる」ことは別のスキルです。
指導者自身が学ぶ姿勢を持つことで、新人育成の質が安定します。現場での勉強会や振り返りの機会を設けることも有効です。

小さな成功体験を積ませる工夫

新人は、小さな成功体験を積むほど前向きに取り組めるようになります。

  • 「さっきの声かけ、とても良かったよ」
  • 「この前よりスムーズにできていたね」

といった具体的な褒め方が有効です。

ミスを責めず改善につなげる文化を作る

ミスを恐れる職場では、報告が遅れたり隠れてしまう危険があります。厚生労働省も、“ミスを共有し改善につなげる風土が安全性を高める” と示しており、「どう防ぐか」「どうすれば良くなるか」に焦点を当て、改善につながる話し合いを行うことが重要です。

参照:厚生労働省「介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等」(閲覧日:2025年11月13日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586129.pdf

おわりに

おわりに

新人介護職の育成は、指導者と新人が互いに歩み寄ることで質が高まります。伝え方の工夫は新人の不安を和らげ、受け止め方の工夫は学びの深さを生みます。
丁寧なコミュニケーションや安心して発言・相談できる環境、整った指導体制は、新人の成長と定着に欠かせないポイントです。
新人が「ここなら頑張れそう」と思える職場づくりは、利用者様へのより良いケアにも直結します。ぜひ本稿の内容を、新人育成の現場で活用していただければ幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!