「利用者さんともっと心を通わせたい」「現場のチームワークを良くしたい」――介護や医療の現場で働き、転職・就職を考える皆さんは、一度はこうした思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。介護職におけるコミュニケーションは、単なる会話以上の意味を持ちます。利用者の生活や安全、ケアの質、そして職場の雰囲気に直結し、プロとして欠かせないスキルです。この記事では、厚生労働省など信頼できる情報をもとに、介護職で求められるコミュニケーションスキルの本質や、すぐに実践できるテクニックまで詳しく解説します。
介護職とコミュニケーションの関係

介護職においてコミュニケーションが果たす役割は多岐にわたります。
利用者との信頼関係づくりだけでなく、ご家族や医療職・他スタッフとの情報共有、チームケアにも欠かせません。
なぜコミュニケーションが重要なのか
- 利用者の安心・安全の確保
体調変化や不安、要望を素早くキャッチし、適切にケアに活かす。 - 生活の質(QOL)向上
気持ちを汲み取り、寄り添う声かけやふれあいが、日々の満足度を高める。 - チームケアの推進
情報共有や相談がスムーズに行えることで、組織全体の質が上がる。
厚生労働省も、利用者とのコミュニケーションおよびチームのコミュニケーションの重要性を強調しています。
参照:厚生労働省『介護の特定技能評価試験学習テキスト』(閲覧日:2025年7月28日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001253098.pdf
介護職に求められるコミュニケーションスキルとは

一口に「コミュニケーション力」といっても、その内容は多様です。介護現場で特に重視される主なスキルを整理します。
スキルの種類 | 内容例 |
傾聴力 | 相手の話・気持ちを否定せず、じっくり耳を傾ける |
共感力 | 相手の気持ちを理解し、受け止める姿勢 |
観察力 | 言葉以外(表情・しぐさ・生活サインなど)から変化を感じ取る |
表現・説明力 | わかりやすく、丁寧に伝える(難しい言葉を使わずに) |
非言語コミュニケーション | アイコンタクト、頷き、身体的な距離感・態度 |
報連相(報告・連絡・相談) | チームや上司・他職種への適切な伝達 |
認知症ケアにも欠かせないコミュニケーション
「言葉が通じにくい」「記憶障害がある」利用者とも信頼関係を築くには、非言語的なやり取りや、安心感を与える関わりがさらに重要です。厚生労働省「認知症ケアパス」でも、個別性を重視した対話や体調変化への気づきが勧められています。
実践的なコミュニケーションテクニック

それでは、今日から現場で役立つ実践テクニックを具体的に紹介します。
1. 傾聴の基本「相手の話を最後まで聴く」
- 相手の話は途中で遮らず、まずは最後まで聴く態度を持つ
- うなずき、あいづち(「はい」「そうなんですね」)を活用
- 目線を合わせ、相手に関心を示す
コミュニケーションの基本は「受容」と「沈黙を恐れないこと」。相手が話しやすい雰囲気を作ることが大切です。
2. 共感を示す一言・リアクション
- 「つらかったですね」「その気持ち、よくわかります」と共感ワードを使う
- 相手の気持ちや発言を自分なりに言い換えて返す(リフレクション)
- 話題がネガティブなときも、頭ごなしに否定しない
3. わかりやすい表現・説明
- 専門用語は使わず、わかりやすく簡潔に伝える
- 「これからお薬を塗りますね」「いまから立ち上がります」など、声かけしながら動作を行う
- ジェスチャーや指差し、イラストも活用
4. 非言語コミュニケーションのコツ
- アイコンタクト、柔らかな表情、静かな声
- 触れるケアの場合、事前に声をかけてから
- 利用者が不安なときはそばで寄り添う
5. 状況に応じた情報共有・報連相
- 利用者の変化や気づいたことは、その日のうちに報告・メモ
- 職種や立場を問わず、逐次コミュニケーションを
- 困った時は一人で抱え込まず、すぐに相談
チームケアの質向上のために「報告・連絡・相談(報連相)」が求められています。
シーン別・ケーススタディで学ぶ

ケース1:初対面の利用者への対応
【ポイント】
・明るい挨拶と名乗りからスタート
・相手のペースに合わせて、無理に会話を広げない
・「困っていることはありませんか?」など、安心を伝える一言を添える
ケース2:認知症高齢者への接し方
【ポイント】
・ゆっくり、はっきり、短い言葉で話す
・怒らず、否定せず、同じ話でも何度も応じる
・表情や雰囲気で安心感を与える工夫
ケース3:ご家族や関係者とのやりとり
【ポイント】
・情報は正確に、タイムリーに伝える
・悩みや不安に共感する姿勢を忘れずに
・ケア方針や疑問があれば必ず確認・説明
ケース4:スタッフ間のコミュニケーション
【ポイント】
・朝礼や申し送りタイムで積極的に発信
・良好な関係づくりのため、日常会話も大切に
・トラブル・誤解があった場合は早めに謝罪し修正
よくある課題とその乗り越え方

利用者との会話が続かない、信頼関係が築きにくい
- 質問攻めは避け、相手の話や生活歴に関心を寄せる
- 「○○さんらしいですね」「すてきな思い出ですね」と共感のコメントを挟む
忙しいとき、つい対応が事務的になる
- 短い時間でも「声かけ」を省略せず、目を見て話す
- あたたかい表情やジェスチャーでフォロー
コミュニケーションが苦手と感じる場合
- まずは一言、話しかける(「おはようございます」「今日は暑いですね」でもOK)
- 日記や記録の振り返りで、自分のやりとりを見直す
日頃からの「振り返り」がコミュニケーション力の向上につながります。
介護現場で推奨されるコミュニケーション研修・資格

- 介護職員初任者研修や実務者研修には「コミュニケーション技法」が必須科目
- 福祉用語や認知症ケアの専門研修も随時実施
- オンラインやeラーニングの教材も活用
参照:厚生労働省「介護分野における生産性向上e-ラーニング」(閲覧日:2025年7月28日)
https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei-elearning
転職・就職活動で問われるコミュニケーション力アピールのポイント

面接・エントリー時のヒント
- 自分の「聴く力」「伝える力」をエピソード交え説明
- 苦手だった経験や、工夫して改善した体験を具体的に話す
- チームワークや多職種連携の中での役割例を簡潔に伝える
求人票や採用基準で重視されるポイント
- 「コミュニケーション能力」や「協調性」は必須要件で記載される傾向
- 利用者・ご家族・スタッフの誰に対しても「わかりやすく」「丁寧」に接する力を評価
まとめ

介護職のコミュニケーション力は、生まれつきではなく“経験”と“振り返り”、意識的な工夫で必ず伸ばせるものです。
利用者一人ひとりの人生や個性を尊重する姿勢、同僚や他職種との信頼を築く力は、本当にプロフェッショナルなケアにつながります。
ぜひ、ここで紹介した基本テクニックやケーススタディを、日々の現場や転職・就職活動で実践してみてください。あなたの一言・一動作が、利用者や職場全体を明るく元気にする力になるはずです。