2021年にマイナンバーカードを健康保険証として利用できる「マイナ保険証」の適用が始まりました。2024年秋には現行の健康保険証が廃止され、本格的に始動します。本コラムではそのメリット・デメリット、今後の見通しをお伝えします。
マイナンバーカードとは……
マイナンバー制度は「社会保障と税の一体改革」の一環として、行政の効率化、個人の利便性の向上、公正・公平な社会の実現を目的として導入されました。マイナンバーカードは、マイナンバーを記載したICチップ内蔵のカードで、現在国民の約8割が取得しています。2021年には健康保険証と一体化、さらに近々、介護保険証としての適用もスタートします。
マイナ保険証のメリット
①医療機関での受付が自動化
ICチップから読み取った情報と顔写真を照合し、自動で本人確認と加入している健康保険の内容が確認できます。
②就職・転職・引っ越し時の切り替えがスムーズ
就職や転職、引っ越しの際の健康保険証の手続きが不要になります。
③マイナポータルで健診や薬剤の情報を確認可能
特定健診情報、薬剤の処方、医療費の閲覧が可能になります。また、データを医師と共有することで、初めて受診する医療機関や薬局でも正確な情報を伝えられます。
④高額療養費の手続きの簡略化
1か月間に同じ医療機関でかかった医療費のうち、一定の限度額以上は高額療養費制度が利用できます。限度額以上の一時支払いも不要です。
マイナ保険証のデメリット
①利用できる医療機関が少ない
現時点ではマイナ保険証に対応している医療機関や薬局が少なく、完全に切り替わる前に体制を整えることが急務となっています。
②個人情報漏洩のリスク
記載のマイナンバーやICチップに保存されている電子証明書のデータは個人情報です。これらのデータと暗証番号がわかれば、マイナポータルで容易に閲覧できるため、悪用が懸念されます。
今後の見通し
介護保険証の機能の一部も一体化予定
介護保険証は、現在は要介護認定や介護サービスの利用といった手続きの際に、自治体や事業者に提示する必要があります。しかしマイナンバーカードとの一本化により、オンラインで手続きができるため、わざわざ自治体に出向く必要がなくなります。介護サービスの利用者・事業者・自治体の事務業務の効率化が進むと思われます。
しかし、介護保険サービス利用者の多い高齢層ほど、マイナンバーカードの取得率が低いのが現状です。取得していない要介護者の手続き方法を検討する必要があります。また、介護保険証を自己管理できない方も多く、「誰が管理するのか」という不安の声も上がっています。
以下の手続きがオンラインで完結!
- 要介護認定の申請や通知
- ケアマネジャー事業所名の届け出
- ケアプランの作成書類や提出
- 主治医の意見書情報の取得
- 介護状態やサービス内容の変更届け出……など
介護保険の被保険者証のマイナカード一体化により、介護事業所も新たなシステム整備が求められています。また、カードの取得・管理・利用の際には、医療・介護・福祉関係者に大きな負担がかかり、現場での混乱が予想されます。本格的に一本化される前に、職員や利用者がスムーズに利用できるよう、対策を立てていきましょう。